確定測量と現況測量は、不動産の境界を把握するための測量方法ですが、目的や法的効力、精度に大きな違いがあります。売買や資産管理の際にどちらを選ぶべきかは、用途に応じて適切に判断しなければなりません。
まず確定測量とは、土地の境界線を法的に確定させることを目的に行う測量であり、土地家屋調査士が筆界(法的な境界線)を明確にして境界標を設置し、その測量図や境界確認書を作成します。これにより境界争いのリスクを減らし、登記簿上の情報と現況を一致させることが可能です。売却時や相続対策、土地の分筆登記などに必要不可欠な手続きです。確定測量を実施することで、土地の正確な面積や境界線を法的に裏付けられ、取引の安全性が大幅に向上します。
一方、現況測量とは、実際の現地の状況を簡易的に測量し、建物やフェンス、道路などの位置関係を把握するためのものであり、法的な境界の確定を目的としません。精度は確定測量に比べて劣り、境界標の設置や筆界の確定も伴わないため、後々のトラブルや紛争の元となる可能性があります。
このように、確定測量と現況測量は用途、法的効果、費用、期間、精度の点で大きく異なります。土地の売却や重要な取引を行う際は、確定測量を実施することでリスク回避につながり、安心して取引を進めることができます。逆に、初期の現地調査や簡易的な確認だけなら現況測量が適しています。
現況測量とは?簡易測量のメリットと落とし穴
現況測量とは土地の現状を簡易的に測量し、建物やフェンス、道路などの位置関係を把握することを指します。これは土地の正確な法的境界線を定める確定測量とは異なり、あくまで現状の状態を反映した参考情報として用いられます。現況測量は比較的短期間で費用も抑えられるため、利用者にとってのメリットは大きいものの、法的拘束力の欠如や不正確な境界線のリスクも内包しています。
まず、現況測量のメリットは以下のように整理できます。
- 短期間かつ低コストで現地の状況を把握可能であること。
- 建築確認申請や土地活用の初期段階で、迅速に必要な情報を取得できること。
- 複雑な手続きが不要で、手軽に依頼できるため利用しやすいこと。
これらの利点により、不動産の開発計画や建物の増改築を検討する際、現況測量は重宝されます。特に大規模な確定測量を行う前の予備調査として活用されることが多く、現地の現況を把握する初期段階の選択肢としては有効です。
一方で、現況測量の落とし穴として次の点が挙げられます。
- 法的な境界の確定にはならず、隣地との境界争いのリスクを解消できないこと。
- 境界標や筆界確認書が作成されず、登記簿との整合性が担保されないこと。
- 実際の土地境界とズレが生じる可能性があり、不動産取引の信頼性に欠けること。
- 境界の明示義務が関係する売買契約においては不十分な情報となりうること。
特に売買契約においては、境界確定がされていない土地の取引がトラブルの原因となることが多く、現況測量のみで契約を進めると後の境界紛争や損害賠償に発展しかねません。また、確定測量がされていない場合、買主が住宅ローン審査で測量図の提出を求められることもあり、融資の遅延や不成立につながるリスクがあります。
現況測量は利用の目的と場面を正しく見極めて活用することが重要です。費用や期間を節約できるメリットがある一方で、境界問題が将来的に発生しやすい点を十分に理解したうえで、確定測量と使い分ける必要があります。専門家と相談しながら、土地の利用目的に合った測量手法を選択しましょう。